もしかして

感想を待ってくださっている方もいるのかなと思うのですが、なんか上手くまとまりません。

もうごらんになった方多いと思うのですがこの映画、たぶん賛否が相当割れるよね。たとえおおむね気に入ったとしても、ご都合主義に感じるところもあるし、青すぎて鼻につく部分もあるでしょう。もっとLANDSについて知りたかった、もっと掘り下げてほしかったとも思う(ここの部分に関してはディレクターズカットかスピンオフがほしいほど)。決して100点をつける作品ではないと思う。でもいつまでも心にひっかかる。よくできた物語としてではなく、断片的な思い出、自らの記憶のように、よみがえっては消えまたよみがえる。

正直お芝居するじたんにこれほど感銘を受けたのは初めてかも。TVドラマ向けの分かりやすいオーバーアクション、型にはまった、セリフの通りのお芝居ではない。「悲しい」って言いながら悲しい顔をするような、「ふざけるな」といいながら怒った顔をするような、「マジ!?」って言いながら驚いた顔をするようなお芝居ではない。だけど人間って実際の言動と心の中って必ずしも一致しないじゃない。そして実際に心を動かされるのは、そういう心と言葉や行動のギャップが見えた瞬間だったりするじゃない。平凡なようで平凡ではなく非凡なようでいて非凡ではなく、才能などないように見えて実は才能を秘めていて、でもその才能をどうしていいか分からず、時には自分で潰してしまう。50%理解してくれる人もいれば10%しか理解してくれない人もいて(敵が味方になったり味方が敵になったり)、その移ろいやすさに苦しんだり救われたりする。身勝手なように見えて思いやりにもあふれ、しかしやはり身勝手で、鈍感なように見えて実はたくさん傷ついていて、繊細なように見えてでも逞しい。そしてこうした魅力はナツだけに与えられるものではない。たぶん私にもあなたにも備わっているものを、愛しいものとして見るものに差し出すような、ステレオタイプであってステレオタイプでないような。

あと、これも賛否があるようだけれど、ラストシーンが本当にすばらしいと思う(その前の展開には若干無理があるが)。青春の、最も美しい記憶だけを抽出して見せるような、夢のようなラストシーン。厚い防音の硝子が二人を阻み、声は聞こえない。手を触れることもできない。けれどアサコ(そして観客には)ナツが何を歌っているのか分かる。決して戻らない時間、でも決して止まることもない時間。一瞬交差して、また離れて、また一瞬だけ交差して離れていくナツとアサコの時間。過去をいとおしみながら、未来を見る。笑顔にじわりと浮かぶアサコの涙もいい。

この仕事が今後のじんくんにどういう影響を与えていくのか分からないけれど(そしてこんなこと言うのもなんだけどいわゆる一般受けして…というものではないと思うけれど)、少なくとも、私にとっては、何かステージがひとつ変わったというか、私の中での地位を確立した思うくらいインパクトでした。関係者各位に感謝します。ありがとう。